自己肯定感を育む環境作り ~天神を活用した発達支援の事例~

開会のご挨拶と本日のテーマ

2時になりましたので、12月のセミナーを開始いたします。本日は、「自己肯定感、自立支援を含む天神を使った環境づくり」をテーマに、アール医療専門職大学の坂本先生をお迎えし、約1年間にわたる事例研究の発表や、インタビュー形式でその知見を伺います。

ゲスト紹介:実践重視の専門職大学から

本日のゲストは、アール医療専門職大学の坂本先生です。准教授として、リハビリテーション科学、地域研究、福祉、医療、そして認知機能、うつ、発達障害などの分野でご活躍されています。

坂本先生から、アール医療専門職大学について、その特色を簡単にご説明いただきます。
「専門職大学は、2019年頃から文部科学省が推進する新しい大学のスタイルです。通常の大学とは異なり、実践的な学びを研究と教育に活かすことを重視しており、産学官連携や地域とのつながりを大切にしています。即戦力となるスペシャリストを養成することに特化した大学です。」

本日のセミナーの流れ

本日は、まず発達障害児に天神を使った学習環境を作った際の効果と事例について、約1年間の研究発表を行います。続いて、坂本先生が感じられた環境づくりの大切なポイントをお話しいただき、療育ツールとしての天神の有効性についても解説します。最後には、今回の研究テーマとは少し異なりますが、生涯学習の可能性について触れ、質疑応答とアンケートのご案内をいたします。

事例研究:天神を活用した学習環境の効果と変化

研究概要:ADHD傾向のある子どもたちへのアプローチ

現在、ADHD傾向のあるグレーゾーンの子どもたち(発達検査の結果が確定していない児童)を対象に、天神を活用した学習環境づくりの研究を進めています。研究期間は約1年で、対象は5歳から11歳(年長~小学5年生)の5名です。学習環境は、当初は教室・施設でしたが、現在は自宅でも保護者がサポートする形へと移行しています。

子どもたちの傾向と保護者の声

子どもたちの様子には、落ち着きがない、集中力がない、精神状態が不安定といった傾向が見られました。坂本先生の分析でも、学習時の姿勢が良くない、一つのことに集中するのが難しい、感情のコントロールが難しいといった点が挙げられています。一部の児童には、ナルコレプシー(過度な眠気)の症状も見られました。

無理強いしない学習環境の設定

学習環境は、週2~3回、1回あたり20分程度を想定して設定されました。命令的な指示を避け、「協力してくれると嬉しい」というスタンスで本人に伝え、保護者には効果を最大化するための協力をお願いする、というアプローチが取られました。

天神導入による顕著な変化

約1年間の研究で、以下のような目覚ましい効果が確認されています。

  • 姿勢の改善: 学習時の姿勢が良くなりました。
  • 集中力の維持: 20分程度の学習時間であれば、集中力が保たれ、楽しんで取り組む様子が見られました。
  • 自己肯定感の向上: 何かを成し遂げることへの自信が育まれました。
  • 自立心の芽生え: 様々なことに自ら取り組む意欲が芽生えました。
  • ナルコレプシー症状の軽減: 該当する児童の症状がほとんど見られなくなりました。

事例1:引っ込み思案な子どもの劇的な変化

当初、兄弟との比較で苦しんだり、集中力が続かなかったりしたお子さんが、天神の利用開始から約1ヶ月で劇的な変化を見せました。自分で学習を進めるようになり、母親からは「毎日やっても良いか」という問い合わせがあるほどでした。さらに、1ヶ月後には「習い事をしたい」と本人から申し出があり、球技が苦手だったお子さんが運動技能にも良い影響があったと保護者から報告がありました。

事例2:HSC(敏感すぎる子)の症状軽減と適応力向上

完璧主義傾向があり、思い通りにいかないと発作を起こしてしまうHSC(Highly Sensitive Person)傾向のあるお子さん(5年生)も、天神導入後に大きく変化しました。約3ヶ月で発作の回数が大幅に減少し、学校への登校回数も増加。注意機能と空間認知能力の向上により、状況判断能力が改善され、精神的な成長につながりました。現在では、発作を起こすことはなく、芸術的な活動にも意欲的に取り組んでいます。

環境づくりの重要ポイント:坂本先生からのアドバイス

今回の事例研究を通じて、学習環境づくりにおいて大切なポイントがいくつか明らかになりました。

  • 適度な距離感と声かけ: 常に付きっきりではなく、適度な距離を保ちつつ、要所要所で声かけを行うことが重要です。過干渉を嫌う子どもたちには、定期的な面談で間接的に褒める(例:「お母さんはよく導いているね」)ことが効果的です。
  • 過程を認める褒め方: できたことだけでなく、行動した過程全体を認め、スポットを当てることが大切です。
  • 集中できる時間の設定: 子どもによっては、あえて時間設定しない方が良い場合もありますが、事業所運営などでは、目安としての時間設定が有効です。
  • 聴覚へのアプローチ: 視覚だけでなく、天神の読み上げ機能や、正解時の褒め言葉(「すごい!」「天才!」など)が、子どもの自立心や自信を育みます。
  • 得意なことを伸ばす: 苦手なことを無理強いするのではなく、得意なことを伸ばすことで、子どもたちが主体的に学べる環境を作ることが大切です。

療育ツールとしての天神の強み

天神は、療育ツールとしても多くの強みを持っています。

  • 読み上げ機能: 幼児版は全てに搭載、小学生向けはオプションで追加可能。
  • 音声による称賛: 正解時に褒める音声機能が、子どもの成功体験と自信を育みます。
  • チークコンテンツ: 図形やワーキングメモリに特化したコンテンツは、脳機能の発育に効果的です。
  • 音声演出のオフ機能: 子どもの好みに合わせ、音声演出を調整できます。
  • アニメーションレクチャー: 視覚と聴覚から学べる解説授業を提供。

将来への展望:生涯学習ツールとしての可能性

今回の研究では、発達障害児への活用だけでなく、生涯学習ツールとしての天神の可能性も示唆されました。

発達障害分野は、子どものみならず老年期も含まれます。認知症予防は、生まれてすぐから始めるべきという考え方が広まる中、天神のようなツールで注意機能、ワーキングメモリ、空間認知能力といった脳機能を鍛えることで、予防につながる可能性があります。株式会社タオでは、この生涯学習分野への展開にも関心を持っており、今後、坂本先生の研究と連携しながら、新たな取り組みに挑戦していくことも視野に入れています。

質疑応答とアンケートご案内

本日は、坂本先生のご研究発表や、天神の活用事例についてお話ししました。

ご清聴いただき、ありがとうございました。
来月は「英語教育」をテーマにしたセミナーを開催予定です。ご参加をお待ちしております。

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